江戸の面影が残る、坂と石畳と黒塀のまち
徳川三代家光の時代、江戸城と大老屋敷を結ぶ「御成道(将軍が通る特別な道)」として整備されたのが現在の神楽坂通り。江戸時代にはもっと急な坂道で両側には武家屋敷が建ち並んでいました。
神楽坂通り沿いに位置する毘沙門天(善國寺)は江戸で一、二を争う数の参詣客が訪れた名勝となり、例祭を歌や舞いで盛り上げるお神楽にちなんで「神楽坂」と名付けられたと言われています。
江戸末期には遊興の地となり、神楽坂花柳界が誕生。"山の手銀座"と呼ばれる繁華街へと変わります。
神楽坂通りから脇道に入っていくと、かくれんぼ横丁、本多横丁、兵庫横丁などと名付けられた、人がぎりぎりすれ違えるほどの細い道が縦横に通っています。これは江戸時代の町割りをそのまま残しているためで、この雰囲気を味わうために観光客も多く訪れます。
明治28年に牛込停車場(現在の飯田橋駅)が誕生すると、尾崎紅葉や坪内逍遥、泉鏡花、夏目漱石、美人画の鏑木清方などの文化人が移り住み、江戸から続く伝統文化に加えて新しい文学や芸術が生まれるまちとなっていきました。
神楽坂花柳界は昭和初期に最盛期を迎えます。記録では新旧2つの見番に芸者置屋が166軒、芸妓数は600余名もいたとのこと。その名残で現在も能楽や長唄、三味線など古典芸能のお師匠さんが大勢暮らしているそうです。
神楽坂仲通りに位置する「千月」は昭和10年創業、伝統と格式のお座敷文化を守り続けている老舗料亭です。
なお、神楽坂では矢来能楽堂や宮城道雄記念館検校の間など、合計5つの建築が国登録有形文化財に登録されています。
本多横丁の奥路地では、かつて待合として利用されていた花街建築「旧常盤家本館」が守られています(内部は非公開)。
兵庫横丁にある「和可菜」は山田洋次監督や野坂昭如、伊集院静等、作家が物書きに専念するために定宿としていた旅館(一度廃業しましたが、現在再生プロジェクトが進行中)。
ここは、なんとブティックホテル。外観にはまったく手を加えずにアーティスティックな空間にフルリノベーションして「TRUNK(HOUSE)」と名付けられ、欧米の富裕層向け旅行メディアに絶賛されています。客室は1室のみ、プライベートバトラーとプライベートシェフが付き、一泊50万円〜(消費税サービス料別)。
https://trunk-house.com/
「赤城神社」も神楽坂を代表するスポットのひとつです。2010年に建築家・隈研吾氏が再生プロジェクトに加わって、カフェを併設したモダンな神社に生まれ変わっています。グッドデザイン賞を受賞したガラス張りでモダンな社殿は、ライトアップが美しい夕刻のお散歩がおすすめです。
大木が残る境内の雰囲気も清々しく、歴史を感じさせます。
そんな神楽坂には日本文化の魅力を再発見できるモダンなショップも集まっています。
2019年にオープンした「AKOMEYA TOKYO in la kagū」は神楽坂上のシンボル的な存在。新潮社の元倉庫をリノベーションした印象的な建物で(こちらも隈研吾氏が設計)、「一杯の炊きたてのごはんから、つながり広がる幸せ」をテーマに厳選されたお米の量り売りや調味料類、雑貨を販売しています。羽釜炊きごはんが売りのレストランや、レトロな甘味カフェも併設しています。
AKOMEYA TOKYO in la kagū
- 所 在 地
- 新宿区矢来町67
- 電 話
- 03-5946-8241
- 営業時間
- 11:00 〜 20:00
- 定休日
- 不定休
- URL
- https://www.akomeya.jp/store_info/store/sinlakagu/
江戸時代、神楽坂の下には神田川の船着き場がありました。米・味噌・醤油・酒など全国選りすぐりの銘品がここで荷揚げされ、江戸市中へ運ばれたという土地の由来にちなんで、神楽坂下に3年前にオープンしたのが、甘酒専門店「のレンMURO」。全国各地の蔵元から米、米麹、水と上質な材料のみで作る身体にやさしい高品質の甘酒がずらりと並びます。米麹を使った石けんやコスメ、入浴剤なども取りそろえ、日本の発酵文化の奥深さに触れることができるショップです。
のレンMURO
- 所 在 地
- 新宿区神楽坂1-12-6
- 電 話
- 03-5579-2910
- 営業時間
- 11:00 〜 19:00
- 定休日
- 火曜日
- URL
- https://koujiamasake.jp/
※この記事は2021年2月25日時点での情報です。