ココジカ

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オトナが愉しむチョコレートの世界

Vol.15 / 2013, 01

もうすぐバレンタイン。街中に多種多様なチョコレートが溢れていますね。「今年はどのチョコを贈ろうかな?」と今まさに迷っているあなた、ショップに足を運ぶ前に、今号のココジカで、奥の深いチョコレートの世界を探訪してみましよう。チョコレート選びがより楽しくなると同時に、チョコレートを味わう時間をより豊かなものにする知恵を、ショコラ・コンシェルジュの平田早苗さんに伺いました。

SUNWOOD CLUB MAIL MAGAZINE Vol.15
平田早苗(株式会社ポットラックインターナショナル代表取締役)

平田早苗(株式会社ポットラックインターナショナル代表取締役)
管理栄養士・ショコラコンシェルジュ・スイーツプランナー

スイーツに関して幅広いアドバイスやコーディネートを行う。新商品の企画開発やレシピ提案、店舗改善などの他、食の専門学校「レコール・バンタン」ではスイーツプランニング講座を担当。
中でもチョコレートが大好きで、大人の嗜好品としてチョコレートを学び、楽しんでほしいという願いから2004年より「大人のためのショコラ講座」を開講。お酒やその他のドリンク等を組み合わせた「マリアージュ」を提案し、ショコラコンシェルジュ(ショコラの案内人)として全国各地でチョコレートを楽しむ講座やイベントを開催するほか、コラムの執筆やメディアへの出演等、チョコレートに関する情報発信を続けている。
http://www.potluck-i.com

チョコレートは万能薬!?

●あなたがチョコを食べる時間は「朝派」?「夜派」?

甘くて濃厚なチョコレート、あなたは普段いつどんな風に食べていますか? ティータイム? スポーツ時? それとも仕事の合間でしょうか?

面白いことに、チョコレートには二面性があります。チョコレートの主原料であるカカオ豆由来の抗酸化物質「カカオ・ポリフェノール」は、ストレスに対する抵抗力を高めてくれる成分として注目されています。ラットを使った実験では、身体的・心理的ストレスの負荷を、カカオポリフェノールが改善したという結果が出ています。たとえば試験勉強などで頭を使うときや、仕事に集中したいとき、「やる気スイッチ」を入れたいときにチョコレートを食べるのが効果的といわれるのはこのためです。朝ならビターチョコレートで気分をしゃきっとさせるというのは、理にかなっているといえるでしょう。

一方、海外のホテルなどに行くと、よくベッドサイドにチョコレートが置いてありますよね。そんな「眠る前にチョコレートを一口どうぞ」という欧米の習慣にも、理由があります。カカオに含まれる「テオブロミン」という成分が、精神を落ち着かせてリラックスさせてくれるのです。ですから、ナイトキャップ(眠る前の軽いお酒)と一緒に、リラックスしながらチョコレートを味わえば、気持ちを落ち着かせて眠りにつくことができます。

朝食べても、夜食べても効果的なチョコレート。味覚をとぎすませてじっくり味わうなら、少しお腹が空いているくらいのときのほうがよいともいわれます。プロのショコラティエには、味覚が敏感な朝食の前に、チョコレートのテイスティングを行っている人もいるほどです。

●チョコレートはフルーツ!?

チョコレートの原料がとれるカカオの木は、高温多湿な赤道付近の地域でしか育たない植物なので、日本には生産適地がありません。主な産地はアフリカと中南米、また東南アジア(ジャワ島やスラウェシ島など)やハワイ諸島でも栽培されています。 カカオの実を収穫して種子を発酵させ、乾燥させたものが「カカオ豆」です。

カカオ豆
カカオの実
© leungchopan - Fotolia.com

カカオ豆は発酵させることで化学変化が起こり、チョコレート色に変化。あの独特な香りを放つようになります。またカカオ豆の味は、コーヒー豆と同じように、品種や産地によって全く異なっています。各地のカカオ豆を吟味してブレンドしたり、砂糖や油脂分の配合比率を変えたり、乳製品を加えたりすることによって、チョコレート会社は一定の製品を作っているわけです。
チョコレートも、元をたどれば木になっていたフルーツ。シンプルな素材本来のおいしさというものがあるのです。

コラム:歴史編 飲み物から食べ物に変わったチョコレート革命

チョコレート文化の発祥は中米の古代文明。紀元前2000年頃のメキシコですでにカカオの栽培が行われ、他の薬草と混ぜて解熱や解毒、胃腸薬として使うなど、その効能は古くから知られていました。アステカ帝国では、カカオ豆を焙煎してすりつぶしたものに水や唐辛子、トウモロコシ粉などを混ぜ合わせたドロドロした飲み物が作られ、王侯貴族のための高価なスタミナドリンク「カカワトル(カカオの水)」として珍重されていました。

16世紀に中南米を征服したスペイン人コルテスによって、カカオ豆とカカワトルはヨーロッパの貴族社会にもたらされ、砂糖を加えた甘い飲み物へと変化していきました。
「食べるチョコレート(eating chocolate)」いわゆる板チョコが誕生したのは、コルテスの時代から300年も経った1847年。すりつぶしたカカオペーストから脂肪分を分離・調整する技術が進んだことより、イギリスで世界初の板チョコレートが発明されました。文明開化期の日本にもチョコレートは高価な贅沢品として輸入され、その後、大正時代になって森永製菓や明治製菓のチョコレート工場が誕生しました。

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