ココジカ

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鍋は日本の生活文化 いつもと違う食材で鍋を愉しもう

Vol.61 / 2016, 11

寒さが増してきて、鍋物が恋しい季節になりました。鍋といえば、ポン酢で味わうスタンダードな鍋やキムチ鍋、最近ではトマト鍋などありますが、実は意外な食材も鍋になるのです。今回のココジカは鍋の魅力を深掘りするべく、「世界を鍋にする」を合い言葉にユニークな社会活動をしている鍋奉行こと岡村英明さんに「え?そんなものも鍋になるの?」という声が聞こえてきそうな、一風変わったおいしい鍋の作り方・愉しみ方をお伺いします。

SUNWOOD CLUB MAIL MAGAZINE Vol.61
日本一鍋プロジェクト主宰・鍋奉行
(株式会社ナーベ 代表取締役)岡村英明さん
お話しを伺った方
日本一鍋プロジェクト主宰・鍋奉行
株式会社ナーベ 代表取締役
岡村 英明さん

工学博士。ソニーで16年以上、ロボット犬AIBOやプレイステーションシリーズの開発現場に携わる。2012年に独立し、「日本のモノ作りを復権、現場で一人でも多くの人を元気にする」を使命として、独自のコーチングプログラムを提供。鍋を囲んでお互いに仲良くなり、モノ作りに必要なチームワークに生かしていく「日本一鍋プロジェクト」を主宰し、日本各地で年間30回の鍋イベントを開催しています。年間で、のべ300人以上の方と鍋を囲んでコミュニケーションを図っています。

メーカーの商品開発の現場にいた頃は非常に厳しい上司で、部下を精神的に追い込みかけた経験があるといいます。それをきっかけに心理学やコーチングを学び始め、職場の雰囲気を変えることに成功。メーカーから独立後、鍋の効用に注目し、自らを鍋奉行(鍋コーチングのファシリテーター)と名乗り、人材育成支援を始めました。

「人は鍋を目の前にすると、おいしいものを食べ続けたいから、ネガティブな発言をしなくなりますね。また、ふだん口ベタな人がとても饒舌になったりもします。そんな鍋の持つパワーを生かして、ものづくりを活性化させるべくアイデアを出し合う『ビジョン鍋』、部署のチームワークをよくする『社内鍋』なども提案しています」

鍋とはクリエイティブなもの

鍋は日本が世界に誇る文化。鍋に魅了され、鍋奉行を仕事にしてしまったのが岡村英明さん。年間30回行っているイベント「日本一鍋プロジェクト」は、おいしい鍋を囲めば人はいつもより饒舌になるのではないか、という仮説から始まりました。

鍋奉行による「白菜投入〜」のかけ声とともに、テーブルを囲む皆で協同作業をします

鍋奉行による「白菜投入〜」のかけ声とともに、テーブルを囲む皆で協同作業をします

お伺いした回に行われていた日本一鍋は、「しあわせの梅鍋」という企画でした。 何が"しあわせ"なのかというと、梅干しのこと。梅干しは長期間保存が利く食品であり、しわが寄っているものなので、このようにしわが寄るまで、しわを合わせるように夫婦仲良く末永く暮らします...という願いを込めたもので、結婚式の引き出物としても喜ばれているのです。そんな「しあわせの梅干し」を商品化した生産農家さんや、実際に引き出物に「しあわせの梅干し」を使った新婚さんらを交えて、将来の夢のお話しなどを伺いながら、鍋奉行が創作した、極上の梅干しを使った鍋を楽しみました。和室のレンタルスペースに12名ほどの参加者が集まり、鍋奉行のリードのもとで鍋をつつきながら、世代も業界もばらばら参加者が初対面同士と思えないほど、会話がはずんだ会となりました。

「鍋の場とは、食卓でありながら、料理がいままさに生み出されている創造的な場であり、囲む人々はフラットな立場であり、つながりが生まれる場でもあります。私たち日本人は戦後そのような鍋文化とともに、チームワークを育み、優れたものづくりを達成してきたといえないでしょうか?」と、熱く語る岡村さん。

しあわせの梅鍋(豚肉バージョン)

しあわせの梅鍋(

<材料(4人前)>

だし汁(※1)
1,500cc
梅干し(※2)
4個
豚バラ肉
200g
白菜
1/4個
ニンジン
2本
タマネギ
1個
シメジ
1パック
ネギ
1本

(※1)だし汁は昆布とかつお節だしがおすすめ。市販のものでも可。
(※2) 梅干しは南高梅の無添加梅干しがおすすめです。

1. だし汁を火にかけ沸騰させます。

2. 沸騰したら野菜を入れて強火で煮込みます。

3. 野菜が食べられそうになったら、梅干しを入れます。
4人用の9号鍋なら、南高梅の梅干しを4個くらい入れるのが鍋奉行 岡村さんのおすすめです。

4. 豚肉を少しずつ入れます。

5. 豚肉に火が通ったら食べごろです。

鍋奉行の梅干しの愉しみ方

ポイントは、鍋に入れた梅干しをなるべく最後まで食べずに取り出さないこと。鍋の中で煮込めば煮込むほど、出汁として旨味が出続け、風味が深まります。

なお、梅干しを丸ごと入れただけの状態では、想像するほど酸っぱくはなりません。梅らしい酸っぱさが欲しい人は、練り梅や、カリカリ梅を刻んだものを別に"薬味"として用意しましょう。取り分けた小鉢のほうにお好みで追加して、味の変化を愉しむのがおすすめです。鍋プラス梅味、すごく合いますよ!

トッピング用の梅

練り梅や紫蘇梅、カリカリ梅のきざみなどを小鉢にトッピングしながらいただきます。

コラム ビジョン鍋や社内鍋とはどんなもの?

「鍋」とは料理を差す言葉でもありますが、もともと「なへ」の語源が「ひとつの世帯」を意味していたように、ひとつの料理を囲むことによって人の和を広げる、日本独特のコミュニティのありようを指す言葉でもあります。鍋が持っている「おいしさ」と「心暖まる場をつくる力」を、企業のブレーンストーミングやコーチングにも生かそうと、岡村氏が提案しているのが「ビジョン鍋」や「社内鍋」です。仕事のチームとも鍋を囲んで、その効果を体験してみては?

※掲載の情報は発行月時点の情報であり、現在とは異なる可能性があります。