ココジカ

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圏央道(首都圏中央連絡自動車道)で行く酒と肴探訪(湘南・多摩エリア編)

Vol.48 / 2015, 10

文久3年(1863年)に創業し、明治13年(1880年)から現在の地で日本酒を造り続ける福生市の名士石川家の蔵元「石川酒造」。

石川酒造

国の有形文化財である土蔵で造る日本酒

石川酒造の橋本恭男さん

国の有形文化財にも指定されている明治13年(1880年)築の本蔵前で石川酒造の橋本恭男さんから「石川酒造」の日本酒造りをお伺いしました。
「石川酒造」の現在の看板商品は「多満自慢」という日本酒ですが、創業当時は「八重桜」という日本酒を造っていました。「八重桜」という名称は、日本酒を造るうえで濁点が付くことを忌み嫌ったらしく「やえさくら」と言うのが正式な発音だったようです。しかし、昭和8年(1933年)からは「八重桜」から「多満自慢」に変わりましたが、なぜか「たまじまん」と濁点が入っている銘柄になっています。

本蔵内

次に本蔵内を案内していただきました。本蔵は、当時としては珍しく大型な3階建ての土蔵造りで、本蔵内では日本酒を仕込んだり、貯蔵したりしています。土蔵造りは熱を吸収しにくい特徴があり、真夏でも室内の気温は20度から22度ぐらいにしかなりません。お伺いした10月上旬の蔵内は寒いと感じるぐらいでしたが、精米の時期にあたりお米の香りがしていました。

石川酒造の橋本恭男さん

橋本さんは、はんてんを着ておられますが、これには秘密があります。
ひと昔前は、仕込みの前に仕込みタンクや貯蔵タンク内を消毒するために熱湯で洗う必要があり、タンクの上まで梯子を上って熱湯を運び、タンク内に熱湯を入れて消毒していました。熱湯を持って梯子を上るのは非常に危険な作業で、その時に熱湯をこぼして、ひっくり返してしまうことがありました。このときに、はんてんがあればすぐに脱げ、やけどしにくかったため、はんてんを着ていたのです。現在では、ホースなどで直に熱湯を注げるのでこういった苦労はなくなったそうです。
タンク内の消毒が終わるとタンク内にお米と仕込み水を三回に分けて入れます。これを「三段仕込み」と呼びます。これらの工程を含め、2か月以上かかって日本酒ができます。1月になると蔵内は、日本酒好きの方にはたまらない香りが蔵内に充満します。

杉玉・酒林

また、多くの酒蔵の入り口に飾られている大きな玉のようなものはなんでしょうか?
「杉玉・酒林」と呼ばれるものです。これは、奈良県にあるお酒の神様である大神神社(おおみわじんじゃ)の御神木の杉の葉を利用して造られたのが起源と言われています。新酒ができる時期に青々とした杉玉を飾り、色の移り変わりとともに日本酒の熟成度合いを伝えたと言われていますが、この他にも安全醸造祈願や杉の葉には防虫効果があったとも言われています。

甑(こしき)

ポストの横に置かれている大きな樽が甑(こしき)と言う、お米を蒸すための道具です。甑は現在使用していませんが、使用していた頃は、2tのお米を蒸し器の中に運び4時間かけて蒸していたそうです。最近では、同じ量を1時間程度でムラなく蒸してくれる機械があり、たいへん楽になったようです。 この他にも日本酒にまつわる内容だけではなく、多摩の恵というクラフトビールのお話しもお伺いしました。

日本酒の試飲

酒蔵見学の後は、見学者の皆さまがお待ちかねの日本酒の試飲です。見学日は、夏を越して熟成した多満自慢の「ひやおろし」や日本酒で造った梅酒等の試飲をさせていただきました。お代わりができるようですが、お気に入りの味を見つけた方は、お土産として何本も購入されていました。

石川酒造の日本酒

東京都内に7件しかない酒蔵のひとつの「石川酒造」で、歴史を感じながら楽しむ見学は、大満足な旅となりました。酒蔵見学は一般の予約も受け付けています(要予約)ので、皆さまもどうぞお出かけください。 また、英語にも対応しており、海外からの見学の方も増えています。

コラム

●日本酒の保存の仕方

日本酒は、光と温度に弱い飲み物です。

1. 生酒の場合は、酵母が生きているので、必ず冷蔵庫で保管するようにしてください。 常温で置いてしまうと白く濁って、味も酸っぱくなってしまいます。

2. 火入れ後の日本酒の場合は、陽の光があたらない涼しいところに置くか、生酒同様に冷蔵庫で保管するようにしてください。陽の光に当たっていると日本酒は黄色く変色していきます。

3. 開封してしまった場合は、空気と触れている部分が徐々に酸化していくので早目に飲むようにしましょう。
保存の仕方をご紹介しましたが、瓶詰された日本酒がこれ以上美味しくなることは少ないので、購入したら早目に飲むようにするのがおいしくいただけるコツかもしれません。

店舗情報店舗情報

石川酒造株式会社

【住所】
東京都福生市熊川一番地

【ホームページ】
http://www.tamajiman.co.jp/

※詳細につきましてはホームページをご確認ください。

※掲載の情報は発行月時点の情報であり、現在とは異なる可能性があります。