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日本初の入場料のある本屋 六本木「文喫」

Vol.89 / 2019, 03

最近、読書を楽しんでいますか。「本はご無沙汰だなあ」「もうあまり本屋に行かない」という人にこそ足を運んでみてほしいのが、六本木に誕生した「文喫」です。日本初の入場料のある本屋として、世間を驚かせているこのお店。いったい何が人気を呼んでいるのか? 企画を手掛けた日本出版販売にお話を伺ってきました。

SUNWOOD CLUB MAIL MAGAZINE Vol.89
武田 建悟 さん
お話を伺った方
日本出版販売(株)
リノベーション推進部 市場開発課
武田 建悟 さん

本を楽しむために作られた空間「文喫」

2018年6月、六本木通りに面したABC(青山ブックセンター)六本木店が閉店。1980年代から深夜営業していた老舗書店で、新しいアイデアを求めるクリエーターのオアシスのような場所として、閉店を惜しむ声も多かった本屋です。

それから半年後の2018年12月にその跡地に誕生したのが「文喫」です。そのコンセプトは大胆にも「入場料のある本屋」というものでした。

「『文喫』は、本と出合うための心地よい空間と、本を選ぶためのゆったりとした時間を買うところ、ミュージアムのように過ごしていただく場所にしたいということでプランニングしたものです。実は2017年から、この企画は部内で温められてきました。ABCの閉店でこの一等地が空くということで、一気に具体化したものです。」と説明してくれた武田さん。営業時間はかつてのABCの客層に合わせて、遅めの時間までやっています。

さっそく店内を案内していただきました。

① 入口には雑誌の並ぶ「マガジンウォール」

中央にベンチもある1階スペース
中央にベンチもある1階スペース

入口には、写真展などが行われるギャラリースペースがあります。またマガジンウォールに整然とディスプレイされた雑誌の表紙が目を引きます。ここまでのエリアは受付不要で、約90種類ある雑誌はベンチに座って見たり、購入することができます。

「ふだんあまり手に取ることのないマニアックな雑誌、そしてその関連書籍を揃えてあります。ここは自分でも気づかなかった新しい興味と出合っていただく、好奇心の入口のような場所です」(武田さん)

マガジンウォールの内側には関連テーマの書籍が集められている
マガジンウォールの内側には関連テーマの書籍が集められている

② 総合受付で入場料を払い入場バッジを受け取る

有料エリアへの入場料は1,500円で、一日何時間でも自由に過ごせます。
入場料制には、席数の90名までカウントしていて、それ以上は人を入れないという狙いもあります。

「ゆったりと静かに過ごしていただくために、入場制限もすることがあります。満席の場合は雑誌を読みながらロビーでお待ちいただくか、空席が出たらTwitterでお知らせして、再来場していただくというシステムをとっています」(武田さん)

受付。書店員さんもエプロン廃止、スタイリッシュな黒のユニフォームで接客
受付。書店員さんもエプロン廃止、スタイリッシュな黒のユニフォームで接客

③ 「選書室」の本は1点ずつ、約3万冊の本が次々と入れ替わる

最もユニークなのは、新刊やベストセラーの平積みコーナーが全くないこと。もちろん新刊もありますが、すべての本が平等に1冊ずつしか置かれていません。
「そのような本はよその書店で買っていただければいいと割り切っています」。

書店の面積でみれば「文喫」は中クラスですが、1冊ずつしかないため、約3万冊イコール3万種類。多彩な本がコンパクトに置かれていることで、普段は足を向けないようなジャンルの棚にも、思わず足が向いてしまいます。

平積みのない本棚
平積みのない本棚

④ 書店員による本のキュレーションを楽しむ

「今、出版界では1日あたり約200点の新刊が出ています。その中からスタッフが毎日セレクトして並べていますので、本棚の変化も楽しめます」(武田さん)。

蔵書が番号通りにずっと同じ場所に並ぶ公立図書館にはない、“今を生きている本棚”が、「文喫」の魅力といえるかもしれません。

棚には、ハードカバーも新書も文庫も、新刊も既刊もリミックス
棚には、ハードカバーも新書も文庫も、新刊も既刊もリミックス

手に取ったけれど、買わない本は返却ラックに返すと、書店員があとで元の棚に戻してくれます。そのような、他人が選んだ本の山から手にとってみるのも、またおもしろいものです。

返却ラックを拝見。こんな本が出ていたの?!と驚くことも
返却ラックを拝見。こんな本が出ていたの?!と驚くことも

⑤ 思い思いの席で、手に取った本を楽しむ

本を読めるスペース。

本の売り場よりも広いのが、本を読めるスペース。約90席のうちには、書斎タイプの席、ソファー、大テーブルなど、さまざまなタイプの机と椅子が用意されています。空いていれば、気分に合わせてどこに移動してもOK。なかにはクッションとカーペットの席まであって、強者は靴を脱いでくつろいでいます。

なかにはクッションとカーペットの席まであって、強者は靴を脱いでくつろいでいます。

⑥ 上質なBGMとコーヒー、明るさでくつろぐ

空間は、フロア構造や本棚など、ABC時代の面影をあえて残して作られています。あくまで本棚に並んだ本が主役。シンプルな空間は心地よいものです。照明も明るすぎず、暗すぎず、本が読みやすい絶妙な明るさで、アンビエントミュージック風のBGMも本に没頭できるよう工夫がされています。

ちなみにコーヒーと煎茶も上質なうえ、入場料に含まれているためおかわり自由です。

元のABCを知る人には懐かしい2.5階のフロア
元のABCを知る人には懐かしい2.5階のフロア
喫茶室では珈琲と煎茶がフリー
店内では珈琲と煎茶がフリー

※価格は税抜き表記です。
※この記事は2019年3月29日時点での取材による情報です。価格や営業時間などは変わることがありますのでご了承ください。

※掲載の情報は発行月時点の情報であり、現在とは異なる可能性があります。