ココジカ

サンウッドより、暮らしを豊かにするウェブマガジンをお届けします。

Produced bySunwood

我が家で楽しむ 至福のコーヒータイム

Vol.23 / 2013, 09

10月1日はコーヒーの日。国際協定によって決められたコーヒーの新年度は10月からで、この日がコーヒーの年度始めとなります。残暑も落ち着き、暖かいコーヒーが恋しくなる季節。そこで、上質なコーヒーを求めて世界を飛び回っている(株)ミカフェートの川島良彰氏に、自宅でおいしいコーヒーを淹れるコツを伺いました。

SUNWOOD CLUB MAIL MAGAZINE Vol.23

(株)ミカフェート 川島良彰氏プロフィール

(株)ミカフェート 川島良彰氏

1956年静岡県生まれ。1975年エル・サルバドル国立コーヒー研究所に入所し、コーヒーの栽培・精選技術を学ぶ。1981年に上島珈琲(株)に入社し、ジャマイカ、ハワイ、インドネシアで農園開発、レユニオン島で絶滅したと考えられていた品種ブルボン・ポワントゥの復活を成功させる。2007年に同社を退社後、翌年2008年株式会社ミカフェートを設立。訪れた農園は2000以上。コーヒーハンターの異名を持つ。著書に『コーヒーハンター 幻のブルボンポワントゥ復活』(平凡社)、『私はコーヒーで世界を変えることにした。』(ポプラ社)などがある。

おいしいコーヒーの淹れ方

コーヒーの抽出方法には、ドリップ(ペーパードリップ、ネルドリップ)、フレンチプレス、サイフォン、エスプレッソなど色々ありますが、ここでは最も普及しているペーパードリップで淹れる方法を説明します。粗挽きの粉をたっぷりと使って短時間で淹れることがポイントです。コツをつかめばだれでも簡単においしいコーヒーを淹れることができます。

<用意するもの>
ドリッパー、ペーパーフィルター、コーヒーサーバー、コーヒーグラインダー、ドリップポット、温度計、茶こし、クッキングスケール(秤)

1)コーヒー豆の選び方

◎コーヒーはフルーツ、こだわりのある専門店で買う

コーヒーを買い求めるときには、まず「コーヒー豆はフルーツ」であることを念頭において下さい。フルーツであるということはつまり農産物ということですから、収穫時の選別や乾燥方法、加工方法、流通方法、店での保存状態まで、すべてがコーヒーの味と風味を左右します。

また、ワイン同様、同じ農園の同じ品種の豆でも収穫した年によって味が変わりますが、収穫した年まで明示して販売している店はほとんどありません。少なくとも「焙煎日」が明記されているところを選ぶようにしましょう。商品の回転のよい店かどうかを確認する目安になります。また、コーヒー豆の産地を尋ねて、国名くらいは答えられる店を選びましょう。

◎コーヒーを「豆」の状態で確かめてみる

お店で豆を挽いてもらわずに、豆のまま持ち帰ってみましょう。たとえば写真のA(左)の豆とB(右)の豆を見比べてください。

コーヒーを「豆」の状態

Aの中には、このような(下の写真C)小さな未成熟の豆や、焙煎機にかけたときに傷がつき、焦げてしまったものが混ざっています。これらがコーヒーの味を悪くします。

小さな未成熟の豆や、焙煎機にかけたときに傷がつき、焦げてしまったものが混ざっているコーヒー豆。

Bは、私が手がけている「グラン クリュ カフェ」の豆です。一粒一粒が大きく、粒ぞろいで、割れたものや焦げたものが混ざっていません。コーヒー豆を一粒かじって、味を確かめてみるのも品質を理解するのによい方法です。

コーヒーを焙煎豆のままで買うようにすると、このように品質をある程度自分の目で確かめることができます。自分で未成熟の豆や割れて焦げた豆を取り除くだけでも、味を数段アップさせることができます。

2)計り方:メジャーカップは使わず、重さを計る

コーヒー豆は、品質が良いものほど1粒ずつの重量が重く、密度が高いものです。豆の量を計量するときは体積では量らず「重さ」で量る方が望ましいので、クッキングスケールを使って量るようにしましょう。ペーパードリップで淹れる場合の目安は以下の通りです。

豆の量を計量

<抽出量に対するコーヒー豆の分量>
 150cc 抽出 20g
 300cc 抽出 36g
 450cc 抽出 48g
 600cc 抽出 60g

このように、 コーヒー豆の量は単純に抽出量のかけ算にはならないことに注意しましょう。

3)挽き方:ざらめ程度の荒挽きに

ざらめ程度の荒挽き

ペーパードリップであれば、「砂糖のざらめ」程度を目安とします。プロペラ式のグラインダーは挽き具合にバラツキが出て、細かな微粉が出やすいので×です。凹凸の歯が一対になっているフラットタイプのグラインダーは、豆を均一に挽けるのでおすすめです。また、グラインダーは手動式と電動式がありますがどちらとも摩擦熱のでにくいセラミックの歯が付いたグラインダーを選ぶことで香りを失わずに挽くことができます。他にも様々なタイプのグラインダーがありますので、詳しくは売り場で相談してみてもよいでしょう。
さらにできれば、もうひと手間を。どんなグラインダーで挽いても粉に含まれてしまう微粉は雑味が出て風味を損なう原因となるため、茶こしなどを使って粉をふるい、微粉を取り除くことができれば理想的です。

4)軟水で、温度は85〜90℃

軟水で、温度は85〜90℃

コーヒー用の水は、軟水(ph7以下)がベストです。硬水はアルカリ性のため、コーヒーの柔らかな酸味を打ち消してしまいます。またお湯の温度が高いと、苦みや雑味がつよく抽出される傾向があります。おいしい部分だけを抽出するために、温度計を用意して、85〜90℃で抽出しましょう。これまでと同じ豆でもコーヒーの味ががらっと変わるかもしれません。

5)中心部だけに円を描くように注ぐ

中心部だけに円を描くように注ぐ

ペーパーフィルターに挽いた粉を入れたら、粉の表面を平らにならします。最初に、中心から「の」の字を描くようにお湯を注ぎ、全体が湿ってドリッパーからコーヒーが落ち始めるまでゆっくりと注ぎます。このとき、粉の縁(フィルターの近く)には直接お湯を注がないようにします。

30秒ほど、泡が立って粉全体がふっくらと膨らむのを待ちます。

最初の数滴が落ち始めたら、注ぎをストップします。30秒ほど、泡が立って粉全体がふっくらと膨らむのを待ちます。粉が膨らむのはコーヒー内部の二酸化炭素によるもので、よく膨らむほどコーヒーの鮮度がよい証です。
 30秒ほど蒸らしたら、再び「の」の字を描きながら、湯面の高さを一定に保つようなペースで注ぎます。このとき中心部の膨らみに合わせて、中心部に多めに注ぐことがポイントです。縁にはお湯をかけません。

6)最後のひとしずくまで抽出しない

最後のひとしずくまで抽出しない

最後のチェックポイントは、注いだお湯が完全に落ちきる前に、ドリッパーをサーバーから外すようにすることです。(そのためには飲む量より少し多めのお湯が必要です)。これにより、おいしい部分だけを抽出できます。お湯の落ちきったドリッパーの中の粉の中央部だけが陥没し、すりばち状になっていたら、上手にお湯を注げた目安です。

最後に、サーバーのコーヒーをくるくると軽く混ぜ、味を均一にします。

7)コーヒー豆の保存方法

焙煎したコーヒー豆から炭酸ガスと共にアロマが抜けるため、口の狭い容器に移して密閉し、冷暗所で保存することがベストです。また、挽いた後のものは一週間程度で飲みきるようにしましょう。

※掲載の情報は発行月時点の情報であり、現在とは異なる可能性があります。